こんにちは、コンサルティング事業部の吉澤です。
当社のコンサルティング事業部では、業務改革の一環として基幹システムや各業務領域に特化したシステム導入における業務ユーザー側の実務支援やPMO、ベンダーマネジメントのご依頼を数多くいただき、多くの企業様をご支援しています。当社がご支援するプロジェクトの成功の定義は、「新システムが稼働すること」ではなく、「新たなかたちになった業務プロセスが現場に定着し、改革の目的が達成すること」です。
今回の記事では、そのプロジェクトの成功を大きく左右する、新システムのユーザー受入テスト(以下、UAT)からトレーニングという最もユーザー側に負荷のかかるアクティビティを有効に行うための「UATからトレーニングへの流れ」について、当社で培ったナレッジの一部をお届けします。
1. UATは「システム検証」だけでなく「To-Be業務理解」の場と位置付ける
一般的にUATは、システムが要件通りに動作するかを検証する工程とされています。しかし、それに加えて実際の現場で重要なのは、検証を通じてユーザーが新システムを用いたTo-Be業務フロー(=新システムを用いた新たな業務フロー)を改めて理解することです。
システム開発ベンダーが主導する要件定義や基本設計の工程はシステム視点の論点が主となって協議が進んでいくことが多いため、業務ユーザー側の新システムを用いた新業務に対する理解やイメージは十分でなかったり抽象的なままとなってしまったりすることが多くあります。加えて、要件定義や基本設計工程からUATのタイミングまで時間が経過しており、当時協議した記憶が曖昧になってしまうことも多々あります。そのため、テストを行っていくために必要なテストシナリオの準備段階では、業務ユーザー側で新システムを使用した新業務フローを要件定義書等に基づきながら改めて丁寧に確認し、理解を深めていくことが重要です。
こうしたテストシナリオ準備の過程で新業務の理解を深めていくことにより、単なるUATではなく、その後続の工程であるユーザートレーニングへの準備にもつながっていきます。
2. UATオーナーの役割を理解する
UATを行う上では、通常、各業務領域のUATオーナーを決めて検証を推進頂きます。
このUATオーナーに選出された方は、システムと業務の両面で理解を深めることが必要となります。システム操作を何度も繰り返し、UATの後段に実施することになるトレーニングの際に幅広い業務ユーザーにレクチャーできるレベルになるまで、システム操作を含んだ業務の流れや、データの流れを理解する必要があります。
To-Be業務フローの理解については、現行業務との差分を認識しながらポイントを押さえ、システム操作やデータの流れについてはシステム開発ベンダーへの協力を積極的に仰ぎ、コミュニケーションを取りながら理解度、習熟度を高めていきましょう。
3. 実務(リアル)を想定したテストデータを準備する
UATでは業務の流れに沿って操作手順を実施することに加え、本番の状況さながらの状態でのシステムの負荷テストも欠かせません。そのためには、新システムでのルールに則ったマスタデータを準備することはもちろんのこと、日次、週次、月次などのそれぞれの業務イベントごとに想定される最大量の処理データの準備をできると尚良いと考えられます。
データの準備においては旧システムから抽出したデータがそのまま使用できる場合は問題ありませんが、マスタデータやトランザクションデータをそのまま移行できることはほとんどなく、新システムに投入する際には新システム用のデータレイアウトや仕様に変換しなければならないことがほとんどです。
本番稼働に向けてデータ準備するのではなく、本番稼働前のUATにめがけて、本番移行さながらのデータ移行準備を万端にしておくことで、より質の高いUATやその後続のトレーニングを実施できることになります。
4. テスターへの徹底したフォローアップ
UAT期間中、UATオーナーは各テスターからの様々な質問への回答をスピーディーに打ち返すことも、計画通りにUATを進めるための重要な対応となります。
UAT開始時のシステムへのテスターの理解度は低い状態からスタートすることが多いため、質問が多発すると考えてください。テスターそれぞれからシステム開発ベンダーへ直接質問やコミュニケーションが行ってしまうと、プロジェクトとして把握できていないシステム改修依頼が発生したり、システム開発ベンダーの対応工数に影響が出てしまったりする恐れがあるため、UATオーナーはテストユーザーの質問の一次窓口として質疑応答を集約する必要があります。簡単な質問であればUATオーナーから返答することによりUATの進捗を止めずにスケジュールに沿って進めることができるようになります。
また、関係者全員が確認できるようテスト進捗状況や質疑応答事項を一元管理することでテスター間の情報共有を可能とすることに加え、後続のトレーニング向けのFAQを作成する際に役立つ情報源となるメリットもあります。
5. テスト結果はトレーニング計画へ反映させる
トレーニングの工程では本番の業務オペレーションを行うエンドユーザーまで対象者が広がるため、入念な準備を行うことが重要となります。各業務のトレーニング対象者別の実施シナリオを構成し、スケジュールを作成しましょう。トレーニングから参画するエンドユーザーには、そもそものシステム導入の目的やそれまでに整理してきたTo-Be業務フローの説明を行う時間も計画しましょう。トレーニング用の業務シナリオは、UATで使用したテストシナリオを流用することで賄えますが、さらにシステム画面に操作説明を付記したマニュアルを準備してエンドユーザーのよりどころとなるものを準備できている状態でスタートが切れるようにしましょう。操作に迷うポイントや誤解が生じやすい箇所のFAQ化も有効です。トレーニング評価は事前に業務部門とすり合わせ「業務が滞りなく運用できるレベル」を言語化し、評価基準を決めておくことで業務部門にも納得感を持った状態でのトレーニングのスタートを切る事が可能となります。
さいごに:本番稼働を見据えた「一体設計」が成功のカギ

UATとトレーニングは、それぞれ独立したタスクではありません。UATで、システム導入に携わってきた業務ユーザーたちの新システムを用いた業務の理解を促進し、そこからトレーニングを効果的に設計・実施し、さらに幅広いエンドユーザーのフォローアップまでを一貫して支援することが、システム導入プロジェクト成功の重要なポイントです。
当社のコンサルティングは、今回ご紹介したような<実務的に細かいことだけれど重要なこと>をナレッジとして蓄積しており、「単なるシステム導入して終わり」ではなく、「新たなかたちになった業務プロセスが現場に定着し、改革の目的が達成すること」をクライアント様に対してご支援しております。 業務改革に伴うシステム導入や刷新をご検討中、或いはプロジェクトの進め方にお悩みがある企業様、当社にご興味を持っていただけた方は、ぜひAUCENTのコンサルティング事業部までお気軽にご相談ください。